2017/04/28

TITLE:「 休刊のお知らせ 

本日、稲城陶芸新聞編集のためエッセイ「まあ、いいか」は休刊にします。
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2017/04/21

TITLE:「 会議の形態 

 着飾った女優のような桜が舞って庶民的なハナミズキが咲き始めた。工房前の梅林はタンポポの花が絨毯を敷き詰めた。春になって工房の閑古鳥たちも山の向こうに飛び去って賑やかになった。

 ボクは4年前から稲城市芸術文化団体連合会(芸文連)の理事を務めている。芸文連の主な任務は文化祭を主催する組織である。芸文連は別の任務をもった委員会からも要請がある。今年、社会教育委員会から要請があり第一回定例会議に出席した。

 社会教育委員の職務は、社会教育に関し教育長を経て教育委員に助言することを任務としている。主な任務は1」社会教育に関する諸計画を立案する。2」定時又は臨時に会議を開き、教育委員会の諮問に応じ、これに対して意見を述べる。3」職務を行うために必要な研究調査を行う。とある。

 子供の頃、勉強が不得手だったボクは、職務を見て震え上がった。宿題をやらず廊下に立たされたことは数えきれず、先生からの拳骨の痛さは今でも忘れられないほどだ。そんなボクに務まるのだろうか。

 会議は9名の委員で構成されていた。議長、副議長が選出され会議が始まった。みんな偉そうな顔をしている。これはいかん、ここにいると廊下に立たされるぞ!と昔の記憶が蘇った。

 山ほどの書類を手渡された。会議形式は書類での会議である。芸文連の会議も同じなのだがプロジェクターを使わない会議である。別の会議でも2年間でフラットファイルが3冊になった。芸文連の書類は4年間で8冊ある。ボクの勤めていた会社では40年前からOHP(オーバーヘッドプロジェクター)を使った会議だった。OHPからパソコンに代わって会議が進められた。会議の進行が早く、なにより書類が少なくなった。写真などビジュアルで示せるので情報の理解が簡単になる。

 会議の最後にこのことを提案しようと思ったが子供の頃、怖かった先生の顔が脳裏をかすめて、ボクは下を向いた。

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2017/04/07

TITLE:「 ソメイヨシノ 

 ボクの住む町に流れる三沢川の桜並木が満開である。大きなカメラを担いだオジサンたちがここに集まって来る。大きなカメラを担いだオバチャンもいる。

映画のロケでも行われるんじゃないかと思うほどだ。空気が明るくなり柔らかい香りが辺り一帯を包む。一年で一番三沢川が賑う時期だ。三沢川の桜並木はソメイヨシノ、ヤマザクラ、大島桜などが325本植えられている。それぞれの配置を工夫して植えられ長い時期楽しめる。なかでもソメイヨシノは見事である。

 そのソメイヨシノがここ10年間、苗木を育てていないとラジオで聞いた。テング巣病という病原菌に弱く全国のソメイヨシノがピンチと言う。その他、敬遠される理由として環境による樹勢低下がある。街路樹として植えられたソメイヨシノは枝が多く伸び大木になる分、根が張って舗装を壊す。寿命が60年と言われ、戦後植えられたソメイヨシノが植え替えの時期にあり、代わりの品種が植えられているそうだ。

 代替えの品種として「ジンダイジアケボノ」が推奨されている。ジンダイジアケボノはアメリカから里帰りした品種らしい。1912年3月27日、東京市長の尾崎行雄からワシントンに贈られたソメイヨシノの改良品種。ソメイヨシノより赤みがあり、病原菌に強く、大木にならず並木として最適と言う。

 三沢川を歩きながら見事な桜を見上げた。人も桜も60歳を過ぎるとボツボツ終わりなんだろう。桜は散りぎわの潔さが褒められる。人は長寿を褒められる。

 ソメイヨシノは代替わりさせて使命を全うさせた。ボクら老人も代替わりさせて、もうすぐ始まる川面を流れる花筏に乗って下って行った方が幸せではなかろうか。ボクは呟いた。 

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2017/04/03

TITLE:「 花散らし 

 朝、ベランダで体操をしているとラジオから「近頃の若者はエア花見をする」と聞こえた。暖かい部屋で桜の画像を見ながら独りでお酒を飲むという。

ボクの住む町では、4月1日と2日に「桜・梨の花まつり」が開催された。中央公民館と農協が会場になっている。桜並木になっている三沢川沿いに屋台が並ぶ。商工会、ロータリークラブ、ライオンズクラブ、青年会議所、iショップ、芸文連などのテントでそれぞれの催しが行われた。歩道に線路が敷かれ小さな電車が子供を乗せて走る。会場では和太鼓が打ち鳴らされ、若者のライブもある。大道芸、よさこいソーラン、チアダンス、阿波踊り、リメイクした稲城繁盛節の歌と踊りが披露された。梨のすけなどのユルキャラとの記念撮影ができる。なしのすけのドーム型エア遊具の中で子供がはしゃいでいる。ボクの住む町ではエア花見をしている若者はいなさそうだ。

佐賀県東松浦郡には「花散らし」の風習がある。陰暦の三月三日(今の三月三十一日)の節句の翌日に若者たちが野山に遊びに出たそうだ。つまり公に合コンができた行事だった。昔の合コンは、花散らしだけでなく盆踊りも夏祭りも出会いの場所だったのである。お祭りは性解放の原動力として性的色彩を帯びた。若い男女の出会いの場として、また既婚者が一時的な肉体関係をもつ場としてお祭りがあった。

現在、少子化が心配されて久しい。5人に1人が一生も独身で過ごすというデータがあると聞いた。エア花見などしていないで花見会場に足を運んでもらいた。盆踊りや夏祭り秋祭りに参加してほしい。面倒くさがらないでドンドン会話しようではないか。お酒を一緒に飲み交わそうではないか。まだ聞いたことがないが「エアデートで間に合っているから」なって言うんじゃないよ!

まだ3分咲きの桜だが来週には満開になる。満開になった桜はやがて花びらを散らして三沢川の川面に浮かび花筏になって下っていく。花筏に乗ったカップルが誕生すればよいなとボクはぼんやり桜を見上げた。

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2017/03/27

TITLE:「 オランピア  

 メンバーのミケさんは気まぐれにやって来る。来ると作陶の前、タバコに火をつける。品のよい指先にタバコをはさみ、スーッと優雅な煙が流れる。

 ボクは黙ってミケさんの前に粘土の塊をだす。ミケさんの使う白粘土はほとんど白。ミケさんは他のメンバーさんと話しながら粘土の塊から形をつまみ出していく。話し声が聞こえなくなると外でタバコをふかしている。たまに前のファミリーレストランに居ることもある。外で梅畑をスケッチしていることもしばしばある。

 塊から裸婦像がつまみ出された。ミケさんは「あれ、右足が上だったかな。まあ、どっちでもいいか」と呟いた。次の日、マネの画集を抱えてやってきた。ボクに写真を見せて「やっぱり足が反対だった」と笑った。マネのオランピアからつまみだした作品だった。

 画集を読むと19世紀のパリで「オランピア」は、娼婦の意味であることを知った。一糸まとわぬオランピアはまっすぐ前を見つめている。身に着けているものは首飾りと腕輪、片方のサンダルは脱げている。 ミケさんの作品も片一方のサンダルが別に作られていた。首飾りも腕輪もある。

 立体の物をキャンバスに映し出す作業は画家にとって簡単なことだろう。平面なものを立体にする作業はかなりの想像力が必要となってくる。ミケさんはいとも簡単につまみ出すのである。

 ミケさんは画家ミケランジェロを崇拝している。ミケランジェロは画家、彫刻家で建築家、詩人でもある。ミケさんの趣味は絵を描くこと。画家と言ってもよいほどの腕前だ。彫刻はやらないが陶芸がある。建築家になったという話はまだ聞いていない。

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