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安東道正

Author:安東道正
サラリーマンのときに綴ったエッセイ「窓際のロクロ挽き」と「窓際の陶芸家」,定年後に綴った自伝小説「陶芸家弓さん」は本になりました。陶芸クラブいなぎで1冊500円で発売中。
自伝小説「つりあがりもん」に続き「悪戦苦陶、陶芸家ロクさん」を掲載します。
陶芸クラブいなぎ
http://inagitgc.html.xdomain.jp/

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心映え「華道協会45周年式典」 

 三沢川の桜が満開になった。満開の桜の下を六さんはスーツで颯爽と歩いて会場に向かった。華道協会は昭和48年に発足して45年になる。45年の間、文化祭、芸術祭への作品展示、31年間、駅の改札口での飾りつけ、成人式のお祝い花、老人ホームから小学生まで活花の指導を行っている。六さんが出席した式典などお祝いの会場には、必ず華道協会の花が飾られている。他市の式典会場で、ここの迎え花ほど立派な花は見た事がない。

 会場に着くと着物姿の協会会員に迎えられた。皆さん晴ればれした顔で談笑している。式典が始まると会長挨拶があり、市長、議長、教育長の挨拶に続き六さんの所属する芸文連会長の来賓挨拶があった。

 芸文連会長は、「稲城市華道協会創立40周年、大変おめでとうございます。

先日、お陰様で芸文連も45周年を迎えることが出来ました。華道協会は、芸文連45年間の活動で常に中心にいてリードしていただいていると感謝しております。この場をお借りして御礼申し上げます。

 以前読んだ時代小説、葉室麟の銀漢の賦の中に花を活ける場面がございました。

主人公が子ども時代、主人公の母親が花を活けているのを友人が見て『花は自然に咲いて美しいと思いますが鋏をいれなければなりませんか?』と訊ねます。母親は『人は生まれたままで美しい心をもっていると思いますか?人は勉学や稽古によって美しい心ができます。花は鋏を入れることによって美しくなります。花の美しさは形です。人の美しさは覚悟と心映えです』と諭します。

 日頃より華道協会の皆様は、凛として美しい姿をしておいでになります。これは花に鋏を入れる時の覚悟と心映えで習得されていることを私は想像します。

 芸文連は、稲城市の芸術文化に携わるいろいろな団体から成り立っております。45年間、機会均等、相互信頼の精神で継続してきました。これから50年、100年と稲城市の芸術文化をリードしていただきますようお願い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。本日は大変おめでとうございます」と挨拶した。

 会長の挨拶を聞き活花は素晴らしい習い事だと思った。六さんは今まで何気なしに食器作りの一環として花器を作ってきた。自分なりに満足した花器を制作しても六さんの花器を買う華道家は一人もいなかった。六さんは趣味の延長で陶芸教室を始めた。華道の心も茶道の心も何も知らずただ器を作り続けている。六さんの作品には気合が足りないのだ。華道の精神、茶道の精神を学んだうえで作陶しなければ良いものは生まれてこないではないかと六さんは反省した。

 華道も茶道も書道も舞踊も全ての習い事には精神がある。覚悟と心映えは全ての習い事に共通した精神であろう。心映え(延え)は、心のはたらきを外におしおよぼしていくことである。あらゆる対象に「思いやり」「心配り」「おもむき」「風情」をもった気立ての意味がある。

 六さんはもっともっと精進し、心映えのする器作り師を目指したいと思いながら桜並木を歩いて帰宅した。

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[2019/04/26 16:43] 未分類 | トラックバック(-) | CM(0)

榛名山代参 

 桜の蕾が膨らんできた。六さんは榛名山への参拝の為、マイクロバスに乗り込んだ。

六さんは数年前から青渭神社の奉賛会員だが役員ではない。毎年、役員の方々が榛名山への参拝を楽しそうに話すのを聞いていた。今年、奉賛会長が80歳のタナカ会長から獅子舞の仲間のターさんに交代した。ターさんは六さんと同じ世代で元気だ。ターさんは奉賛会員のみんなに声を掛けた。六さんは「ボク、役員じゃないけど行っていいの」と訊くと新会長は「いいんだよ。奉賛会員だったらだれでも・・・行こうよ、ロクさん」と誘った。

 榛名湖の横を通りまだ頂上に雪がまばらに残った榛名山が見えてきた。車窓から見える田舎に似た山々の風景を見ながら子供の頃、父や母が近所の方々と連れ立って金毘羅参りに出かけたことを思いだした。六さんは、あれが代参だったのだと気付いた。

 代参は遠隔地の神社参詣の為、講中より代表をたてる制度。代参をたてる代参講があった。参拝するための積み立てをする制度。代表はくじ引きや輪番で決まった。娯楽がまだまだ充分でなかった江戸時代に始まり現在まで続いている。青渭神社では、講中はないが有志で参拝が続けられている。

 江戸時代の代参には面白い話が残っている。有名なのは、森の石松の金毘羅参りだ。森の石松が船の中で大盤振る舞いをする場面は、何度も見た。江戸では品川の穴守稲荷への参拝に楽しい話がある。

 ある町内で若い衆がそろって品川の穴守神社に参拝して女郎買いに繰り込もうとなった。仲間に新婚がいて「カミさんに悪いので行きたくない」という。仲間はやっかみ半分で強制的に誘うので断れない。新婚さんはカミさんに「つきあいで品川に行くが見世には上がらない」と約束する。約束の誓いに自分の道具の先に左馬を書いてもらった。遊ばなければ消えない作戦だ。ものの勢いは止められない。自分だけ花魁を買わないと言うことはできない。女房の手前、花魁に背をむけていると、花魁は「あたしが嫌いかい」という。事情を話すと花魁は「かわいいね!そういう男にゃ、なお遊ばせたいよ。心配せずにお遊び」という。男は「左馬が消えてしまう」「そんなも後であたしが書き直してあげるよ」。帰った亭主が「ほらこの通り」と前をまくって見せる。なるほどまだ馬の字が書いてあるにはあるが、何だか変。嫁さんは「少し大きくなっているえ」と言うと「そりゃそうさ。ゆんべ豆を食わせた」。

 不謹慎な小話を想いだしていると榛名神社に到着した。鳥居で頭をさげ、いくつかの階段を上がっていくと本殿についた。本殿は、幣殿と拝殿が一体になっていて大きな岩に包まれている。包まれていると言うより大きい岩が覆いかぶさっているような光景に六さんは敬虔な気持ちになった。榛名神社には火の神である火産霊神と土の神である埴山姫神が祀られている。榛名山神社は火と土の神様だ。陶芸家の六さんにとっては大変ありがたい神様なのである。六さんは腰を90度に曲げて参拝した。

 ホテルに着き、大宴会が始まった。花魁はいなかったが二人のコンパニオンがいてお酌をしてくれた。品川の若い衆と違い、こちらは80歳代が二人と70歳代、60歳代の元気の良い爺さんの集団で品も良い。六さんも珍しく音痴の歌を一曲歌った。

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[2019/04/19 11:35] 未分類 | トラックバック(-) | CM(0)

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[2019/04/12 17:30] 未分類 | トラックバック(-) | CM(0)

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[2019/04/05 13:55] 未分類 | トラックバック(-) | CM(0)