2016/05/25

TITLE:「 二足の草鞋 

  工房の前にあるクリの木に白く長い花が咲き、辺りに匂いをまき散らし始めた。クリの花は遠い昔、思春期の頃を思い起こす匂いだ。血気盛んで何にも興味を抱いた。
郷土史研究家のシゲさんから盆踊りの太鼓に誘われて稽古日の月曜日、稽古の会場に行った。2年前、盆踊りのみなみ会に入った。8曲ある内の3曲踊れるようになった昨年の夏、ボクは櫓の一番上でたたく太鼓をやってみたくなった。シゲさんに相談すると「やってみな、簡単だよ」という。稽古場に直径60cmほどの太鼓と桶が並べられた。シゲさんはボクにバチを手渡し「はいやってみな。右手で太鼓を一回、左手で桶を二回、右手で桶を二回、左手で二回、右手で太鼓を一回、左手で桶を二回、右手で桶を一回、これの繰り返しだ」と簡単に言った。ボクの一番得意な炭坑節をたたいてみたが全くついていけない。手に肉刺が出来そうになった頃、解散になった。
  次の日はボクが提案した青渭獅子の後継者不足を補うための二軍制の稽古日だった。提案したボクが女獅子(めじし)を稽古することになった。小学生からやっている若いアキくんの指導で始まった。太鼓を腹に縛り付け笛の音に合わせて身体を動かすと67歳のボクはフラフラになった。
  稽古が終わると社務所で軽い宴会が始まった。シゲさんから「二日続けて新しいことに挑戦している。すごいよ」と褒められた。聞いていた若いアキくんが「二足の草鞋をはいて大丈夫」と心配そうに言った。
 実はボク、今月から別のことも始めている。経営コンサルタントの大前研一さんによると老後は20ほどの趣味をもてばよいという。
ボクは「二足の草鞋どころか二十の草鞋を履いてるわい」と胸の中で呟いた。
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